2017年12月16日_グールドと砂の女
今年はデビッドボウイに始まり、いろんな展覧会/ダンス/ライブ公演に足を運びました。ココには書かなかったけれども10月にはブルーノート東京で矢野顕子トリオも観てきたのでした。そんな2017年のトリは坂本龍一教授ですよね。というわけで、映画「CODA」にも登場した、津波をかぶったピアノを弾いたICCでのライブ、そして草月会館でのグレングールドギャザリングと二週続けて教授に会ってきました。1986年のメディアバンライブ以来31年ぶりの再会を果たしたのでした。草月会館といえば、その昔ヨゼフボイスとナムジュンパイクのパフォーマンス公演があった、ある意味「聖地」なので、この場所で教授のピアノを聴けるのは嬉しいかぎり。パンフレットでは「グールドをリモデル/リワークする」と語っていましたが、まさにグールドテクノリミックスという感じでした。ところでグレングールドさんは「砂の女」が大好きで、原作はもちろん、あの岸田今日子主演の映画も100回以上鑑賞したとのこと。そういえば私も、映画はテレビで1度観たきりだったけれど←この本は若い頃に何度も読み返して「いつもポケットに安部公房」みたいな感じだったってことを思い出したのでした。
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2017年11月23日_教授と貴乃花
坂本龍一教授が、人間の抱える矛盾について語っていたので引用します。
“矛盾してるから、面白いというか、矛盾していることはとりつくろわない方がいいと思います。だから、矛盾点を突かれたりしますよね。でも、矛盾点を批判したり、突くのはね、割と簡単なんですよ、人は矛盾だらけなんですから。愛と言いながら戦ったり、神と言いながら人殺しをしたり、みんなしているんです、それが人間の歴史でしょ。自然が好きとか言いながら人工的な生活をしている。これは自分もそうだしね。(以下略)i-Dより
これは以前、教授が反原発運動の過程で「たかが電気」と発言したことに対して「電気の音楽で儲けたくせに」と叩かれたことに対する解答なんだろうな。と思いつつ、今、矛盾の渦中にあるのは貴乃花なのだ。横綱時代の貴乃花はあまり好きではなかった。王道過ぎたから。私はどちらかというと舞の海みたいなノンスタンダードが好きなので。その後、兄や母との確執などあり「やっと人間らしくなってきた」と好ましく思っていたら、相撲界改革活動を始めたり、やたらとテレビに出ていい人っぽさを振りまいてみたり。そして今回の騒動によって貴乃花の反乱が…。何も語らなくても言いたいことはなんとなく判りますよ。私は貴乃花を応援します。
←教授のドキュメンタリー映画「CODA」を観てきました。来月はコンサートにも参戦予定。30年ぶりに教授に会えるのを楽しみにしています。
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2017年10月7日_ペンギンカフェ
penguin cafe orchestraは1980年代頃に私が好きだった環境音楽のバンド。と言ってもほとんどサイモン・ジェフス氏一人のバンドだった。1997年サイモンが脳腫瘍で死去。その後、息子アーサーが父の遺志を継いで「ペンギンカフェ」として活動を開始。詳しくはウィキペディアをお読みください。そのペンギンカフェのライブに行ってきました。一応ニューアルバムを買って予習して行ったけど、半分はニューアルバムからの曲、もう半分は父サイモンの曲だった。ファンとしては嬉しいけれど、あれれ息子は父を嫌うものでは?と思うのは私がエディプスコンプレックスの本を読み過ぎなのか。やっぱりサイモンは明るくて楽しい曲ばかり。「アーサー。その調子でこれからも頑張れよ」と旧友の息子に声をかけたくなりました。
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2017年9月16日_HRギーガーとエイリアン
エイリアンコヴェナント観てきました。スタンダードなホラー映画として、とても楽しめました。最初の「エイリアン」はエイリアンが主役だったけど、2から4まではリプリー(シガニーウィーバー)が主役。そして今回の主役は人間そっくりアンドロイドなのでした。「そういえば私ギーガーが好きだった」と思い出し、こんなものを引っ張りだしてみました。多分ウチにある中で一番デカい本(画集)「ネクロノミコン」そして「ギーガーズエイリアン」。画集だから今までずっと絵しか観てなかったけど、よくよく読んでみると制作記録のようなものがとても面白い。「ネクロノミコン」にはギーガーの生い立ちなどが書かれていて、この人の奇才ぶりがよく判るのですが、どちらも画集の造りなので文字がとにかく読みづらい。やはり老眼だからかもしれないけど…。エイリアンの中で特に好きなのがこれ←ファンの間では「スペースジョッキー」と呼ばれフィギュアなども売り出されているらしい。造形として美しいなと思います。けれども映画の中のエイリアンは、毎回最後は「ゴキブリ退治」感覚で殺されるのでした。なんだか切ないですが、ギーガーはどう観ていたのでしょうか。
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2017年8月19日_ゆきゆきて神軍のこと
「ゆきゆきて神軍」公開から30周年だそうで、この夏、渋谷で上映されているらしい。迷ったけれど「ここは若者に席を譲るべき」と思い、観に行かないことにした。30年前のあの頃、私は何を思ってこの映画を観たかというと、恐いもの見たさである。子供の頃、上野駅や浅草駅で目撃した傷痍軍人を思い出した。奥崎さんは戦争被害者であると同時に犯罪者であり、精神疾患かもしれない。FBで誰かが奥崎さんのことを「アウトサイダーアート」と言っていた。そうかもしれない。だからこんなに気になるのだ。←本棚の奥から引っ張りだして再読。原一男監督の文章は今読んでも面白い。笑えます。この映画を観たからこそ笑えるのだ。若者よ。今こそこの映画を観てほしい。そして観た人には、この本を読んでほしい。
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2017年7月16日_美大生図鑑
著者のヨシムラヒロムさんとは会ったこともないけれど、FBで友達になっていて(面識のない人から友達申請されても無視することにしてるのですが、この人は絵が面白かったので承認したのでした)この本も「読んでみたい」と購入しました。私より随分若いのに、あの頃の美大生のような緻密な絵を描いていて好印象でした。さて、私も著者と同様に美大に対する思い入れは強いほうです。小・中・高とどこに所属しても「私が居るべき場所ではない」と(家庭でさえも)疎外感を感じてきた私ですが美大予備校とムサ美に関しては「ずっと居てもいい」と思えたものでした。卒業して27年経って、私がこの世に生きていても許されるのは「美大出身」という免罪符を持っているからだと感じています。
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2017年6月9日_ブルーノート東京へ
死(4)んでく(9)るしむ49歳の誕生日、大人になったら一度は行ってみたい憧れのブルーノートへ行ってきました。しかもマリアシュナイダーオーケストラ!デビッドボウイの最後のアルバム「ブラックスター」に参加したメンバーも来てる。ブルーノートデビューに相応しいビッグバンドの魅力を堪能しました。たまたま前の方の良い席に座れたのですが、私の周りはいわゆるジャズオタクおじさんばかり。それぞれ一人客のようですが開演前の歓談時間は常連同士のオタクトークが炸裂してました。こっそり聴いてみると隣席のおじさんはなんと毎日来てるんだとか。一体ブルーノートにいくら貢いでいるのやら。その後、高円寺の小さな劇場で「ジギースターダスト」を観てきました。私もこの半年で随分デビッドボウイに貢いでしまった。祭りはそろそろ終わりにしようと思っています。
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2017年6月3日_横尾忠則版画展
町田市版画美術館にて横尾忠則展を観てきました。←この絵はTBSドラマ水曜劇場「ムー」のオープニングで使われていたやつですね。懐かしいな。展示内容は相変わらずの一貫したメチャクチャぶり。素晴らしいです。ミュージアムショップで物色していると前から欲しかった本「死なないつもり」を発見したので購入しました。本の内容も作品同様いつもながらの横尾節です。まだ斜め読みしかしてませんが、どうしても気になる箇所が…。イマドキの書籍には珍しい、誤植に訂正シールを貼っている!2016年10月に出た初版です。ポプラ社さんが何千冊刷ったのか知らないけど全部に貼ったのかしら。しかも亀倉雄策先生の名前を間違えちゃったとあってはスルー出来なかったのでしょうがコレじゃかえって目立っちゃうもんね。同じ出版業に携わる人間としてご同情申し上げます。
急に話題を変えますが、昨晩「マイノリティリポート」をテレビ放送してたのは、今話題の共謀罪法案への批判と捉えて良いのかしら。テレビで観たのは二度目だけど大変良く出来た面白い映画でした。
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2017年5月21日_現代音楽考
ローザス&イクトゥス「時の渦」を観てきました。ファーズは前回観たので、2003年の日記を参照。グリゼー作曲の現代音楽を7人のミュージシャンが生演奏し、7人のダンサーと絡みます。椅子に座って演奏しているバイオリンのおじさんが、演奏中についつい両足を浮かせていたり、ピアノ演奏しながら指揮の人がピアノを押して舞台上をぐるぐる移動したり。ミュージシャンもまた単なる演奏者ではなくダンスに参加してるのだなと強く感じました。そもそも現代音楽って音だけ聴いてると失礼ながら耳障りな感じですが、こうしてダンスとセットになると途端に心地よくなるのはどうしたことか。
ところで坂本龍一教授の新譜ですけど。ラジオでちらっと聴いた感じでは「やっぱり現代音楽だなあ」と思ったので、すぐには買わずに様子をみていました。その後ワタリウムでの展示を観たり、インタビュー記事を読んだりするうち「やっぱ買わなきゃ」と相成りました。それと「もうこれが最後かも」とも思ったので。ボウイの二の舞にならぬように。
聴いてみると、思っていたよりいつもの教授でした。武満徹やジョンケージのようなガッツリ現代音楽ではない。ヘッドフォンではなくスピーカーと周りの空気を経由して聴くのがふさわしい。
ウチの猫と一緒に聴きたかったのだけど、大きい音は嫌いらしく音楽が鳴ると部屋を出て行ってしまう。でもポールボウルズの声が聞こえてくると「なに?」とこちらの様子をうかがってみたり。
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2017年4月28日_三島由紀夫とデビッドボウイ
デビッドボウイ沼からまだ抜け出せずにいます。
ところで、横尾忠則による「三島由紀夫とデビッドボウイに共通の死生観をみる」なんていう文章を読んで、私も薄々感じてたけど確信が持てずにいたことをここに表明してみる。ボウイが三島ファンだったことは有名ですが実は私も、とか言いつつ高校の図書室で←このfor beginnersを読んでからハマり、少しずつ買い足して我が家の三島コレクションはまあこんなもんです。2014年10月の日記を参照。
三島は死の直前に自分の回顧展を催し、そしてあの11月25日、最後の著作「天人五衰」の最終稿を担当編集者に渡して市ヶ谷へ向かったわけですが、ボウイもまた自殺ではないけれど死の覚悟を持って最後のアルバム「★(ブラックスター)」を発表した。その直後の死であった。これはなんとなく、ボウイが三島を好きすぎて、死に方までも寄せてきたように思えるのは単なるファンの思い過ごしでしょうか。だからこの「ラザルス」のPVは、ボウイ自身が「皆、オレが死ぬとこ見たいんでしょ。見せてやるよ」と言っているようで、なんだか恐ろしくて見てられないのだ。見てるけども。
そして今さらだけど、若い頃の曲よりも晩年の曲のほうが好きかも。生きてる時にちゃんと聴いてなくてごめんなさい。
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2017年3月18日_さいたまでピナ・バウシュ
ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団「カーネーションNELKEN」を観てきました。さいたま芸術劇場にて。ピナ・バウシュは前にも同じ劇場で違う演目を観たことがあったはず。なんだったかな。早めに劇場へ着いてしまったので近くをうろうろしてたら、大きなシェパードを散歩させている人に遭遇。しかも一組ではない。この近くに犬好きの人が住んでいるのかしら?しかし、舞台が始まってしばらくしたら先ほどの犬が登場!ウォーミングアップしてたんか…。
ピナ・バウシュ公演はとにかくお値段が高い。チケット購入時「ホントにいいのか?」と戸惑いますが、見終わると「この値段分の価値はあった」と納得します。今回は特に、犬の調達費用/←このように舞台に花を並べる手間賃(上:開演前、下:終演後)/日本語のレッスン料などが相当かかっているなと思いました。下世話な話ですみません。この公演はダンスというよりは演劇に近い感じで、ダンサー達がとにかく喋る。その多くが日本語でした。他にも英語ドイツ語フランス語が聴こえました。日本語の台詞はありがたかったけれど、覚えるの大変だったろうな。敬服いたします。そして最後に春夏秋冬のダンスが観られて良かった!あっ、デビッドボウイ祭りもまだまだ継続中。
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2017年2月11日_デビッドボウイ熱が再燃
しまった!デビッドボウイ熱が再燃中。去年の夏「地球に落ちてきた男」を観てきた時はなんともなかったのに、回顧展を観たら急に1983年の来日コンサート(横浜スタジアム)に行ったことを思い出し「アタシ歴史上の人物に会ったんだ」みたいな訳の分からない興奮が蘇ってしまいました。
真冬だというのにこんなTシャツまで買ってしまって、どうすんだ…。出番を待つ間にタンスの肥やしになってしまうかも。もうこれ以上散財しないようにと、気休めにインスタグラムやYouTubeを観まくっていますが、病は増悪するばかり。
ほとんど半裸だった舞台「エレファントマン」。京都で撮影された宝焼酎のCM。ルイーズ・ルカヴァリエとの共演。それをナム・ジュン・パイクが映像化してたり。ティン・マシーンで来日してタモリさんの番組に出たり、晩年のPVにティルダ・スウィントンが出たり。ヴィッテルのCM(家の中に過去の自分がたくさん居てうんざりするやつ)。いろいろ観たけど何をやってもカッコ良過ぎるのだこの人は。そりゃそうだ、だって宇宙人だもの。あと、今頃気付いたけど、若い頃から晩年までの間にだんだん歯並びがキレイになってる…。いつの間に矯正してたんだ!あの後何度も来日してたのに、ちっとも気付かなくてごめんなさい。このところ家に閉じこもりがちだったけど、なるべく外に出ていろいろ観ておこう、死んじゃう前に。と考えを改めました。そういえばウチの母もデビッドボウイと同じ69歳で肝臓癌だった。こんな世の中だけど69歳まではなんとか生きてみようと思った。
なんだか知らないけどウチの猫までデビッドボウイに似てるような気がしてきた。どこが?いや頬がこけてるとことか…。ところで、この座り方はダイヤモンドの犬っぽくてお気に入りです。
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2017年1月15日_ゼンタングルと老眼鏡
ゼンタングルについては前から気になっていた。(知らない人はゼンタングルでおググりください)ムサ美の同級生セキヤさんが描いていた絵に似ていたから。セキヤさんの年賀状は毎回こんな感じだった。私もまた授業中またはテレビを観ながら手を動かすのが好きで、何も考えず繰り返し同じ形を描くことで無意識のうちに生まれる絵がわりとこんな感じだった。絵を描くことが好きな人なら誰でもこの感覚は判り合えるはず。ゼンタングルについて調べてみると「アメリカで登録商標されており、講師としての資格をアメリカでのみ取得可能」ってコレおかしくない?ゼンタングルの「ゼン」は「禅」からきているというのに、それはちょっとどうかな。まあ私の勝手な思いですが、この手の絵はアウトサイダーアート的なもので、誰かに教えたり教えてもらったりするものではなく、作家の内面から湧き出るものの表現型なのではないか。ああわかった。私がやっているコレはゼンタングルではなくミニマルドローイング?いや違うな。名付けようも無い何か。これを何かに活かせないか。と最近模索しています。ところで私は昨年、老眼鏡を作りました。そんなに見えなくて困ってるわけではないけれど「見えないのを無理して見ているから眼が痛くなるのでは」と眼科医に言われてしまったので、ついに購入。年齢的なものですね。やりたいことが老いによって阻まれる年齢となってきたようです。
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